Netflixオリジナルドラマ『First Love』を見て
運命というものがあるのであれば、それは美しいものなのであろうか。
必ずしも美しいとは限らないのではないだろうか。
運命と呼ばれる場所に行きつくまでに、傷つき、泣き、時には諦めかけてしまう。
それでも、見えない力、偶然、背中を押してくれる言葉、そして勇気が運命を引き寄せる。
そう、だから、軽々しく運命を美しいと捉えることはできない。
だからこそ、運命を目の当たりにした時、人は感動し、そして涙を流すのであろう。
Netflixオリジナルドラマ『First Love』を見た。
もし、まだ見ていない人がいるのであれば、今すぐこの画面を閉じ、Netflixを立ち上げて見るべきである。
宇多田ヒカルの楽曲「First Love」と「初恋」をインスパイアした内容でストーリーが展開されていく。
主人公の晴道と也英の約20年間を、とても丁寧に描いている。
晴道は也英のことを文字通り「想い続けた」のである。
想い続けた過程は、それは厳しいもので、普通なら諦めてしまう。
それでも晴道は也英を想い続けた。
初めて也英を見てから、瞬く間に恋に落ち、結ばれ、距離が離れようとも也英を想い続けた。
そして、例え也英の記憶が無くなっても、晴道は也英を想い続けていたのである。
晴道は、それが運命だと信じていたから。
也英と結ばれることがないと分かっていても、也英の幸せを願わずにはいられない晴道の愚直な気持ちは、見ている人の心を抉る。
也英もまた晴道に恋に落ちた。
幸せな時間の後に待っていた、次々と也英を襲う過酷な現実。
諦めてしまった夢、息子との暮らし。
諦めることに慣れてしまった、傷つくことを恐れるようになってしまった也英を応援せずにはいられない。
そして、偶然にも再び出会う晴道と也英。
晴道の記憶をなくしてしまっている也英。
也英の記憶が無くなっていることを理解しつつも、也英のことを想い続けている晴道。
也英もまた、再び晴道のことを愛しつつある中、二人の初恋が展開していく様は、心臓が締め付けられるようで痛かった。
現代の晴道を佐藤健、也英を満島ひかりが演じて、特に満島ひかりが凄い。
全9話のうち、第8話のラストシーンで「First Love」が流れた瞬間、僕は失神するかと思った。
全9話だが、こんなにも1話1話が一瞬で終わっていくドラマには久しぶりに出会った。
文字通り、一気見してしまった。
高校、大学時代の晴道と也英を演じていた俳優さんも最高に良かった。
そして、ドラマを通して色が本当に綺麗だった。
監督は、相当色にこだわったのだと思う。
衣装や背景、家具、小物、場所、全てのシーンで色へのこだわりが感じられた。
そして何より、私たちの世代のドンピシャの宇多田ヒカルの楽曲「First Love」。
流れるたびに、胸が締め付けられた。
こんなにも面白いドラマが見れて本当に幸せだった。
寒竹ゆり監督に本当に感謝である。